こめかみ部フィラー注入による失明リスク:深側頭動脈と眼動脈の血管吻合の検討
総合: 71.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 5引用可能性: 8
概要
後ろ向きの血管造影解析により、深側頭動脈と眼動脈を結ぶ4つの吻合経路が同定され、こめかみ部フィラーが逆行性・順行性のフローを介して視力障害を生じうる機序が示されました。骨膜上層が安全という前提に一石を投じ、稀だが壊滅的な合併症の機序的根拠を提供します。
主要発見
- 逆行性・順行性を併用する深側頭動脈(DTA)から眼動脈(OA)への4つの吻合経路を同定。
- DTA—涙腺動脈の直接吻合を示し、他の経路は内側翼突筋動脈(IMAX)経由で浅側頭動脈・眼窩下動脈・中硬膜動脈へ連結。
- 側頭部における骨膜上層注入の安全性という前提に疑義を呈した。
臨床的意義
骨膜上層での注入でも眼動脈への塞栓は解剖学的に起こり得ます。注入量・圧の最小化、カニューレの向き・吸引の限界の理解、リスク説明と緊急対応プロトコルの整備が重要です。
なぜ重要か
深側頭動脈—眼動脈吻合の機序的マッピングを初めて提示し、高リスク領域での注入安全性に直結します。こめかみ部フィラーの教育・指針の見直しに影響し得ます。
限界
- 後ろ向きで小規模かつ選択症例のため一般化に限界があり、リスク定量もできない点。
- 介入的検証がなく、解剖学的経路はフィラー注入による直接実証ではない点。
今後の方向性
標準化した注入シミュレーションやフローモデリング、献体灌流を用いた前向き検証により、層・注入量・圧ごとのリスクを定量化し、実践的な安全手技に反映すること。
研究情報
- 研究タイプ
- 症例集積
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- IV - 選択された血管造影症例を後ろ向きに解析して解剖学的経路を示した研究。
- 研究デザイン
- OTHER