空間メタボロミクスにより、ゼブラフィッシュにおけるボルネオール誘発の多臓器毒性と代謝物変化を可視化した
総合: 74.5革新性: 8インパクト: 7厳密性: 7引用可能性: 8
概要
ゼブラフィッシュとMALDI-MSI空間メタボロミクスにより、高用量ボルネオールが心・肝・神経系の毒性と広範な代謝異常を生じ、腎毒性は明確でないことが示されました。リン脂質・脂肪酸・アミノ酸の撹乱と関連代謝経路遺伝子の変動は、化粧品・医薬品でのBO使用に機序的な安全性懸念を示唆します。
主要発見
- 高濃度ボルネオール(500 μM)はゼブラフィッシュで形態異常、心毒性、肝毒性、神経毒性を生じ、腎毒性は明確ではありませんでした。
- MALDI-MSIにより、PC-34:1/34:2、PI-36:4、PE-36:1、LysoPE-22:5、LysoPC-18:1、FA-18:2、フェニルアラニン、リジン、グルタチオンが上昇し、PC-38:6とPC-40:6が低下することが判明しました。
- リン脂質・脂肪酸・コリン・アミノ酸代謝に関与する遺伝子(elovl5、chpt1、chka、setd7、hgdなど)のmRNA発現が有意に変化しました。
臨床的意義
前臨床ながら、外用・吸入製品でのボルネオール使用に慎重さが求められ、用量上限の根拠付け、代替賦形剤の検討、心毒性・神経行動評価など標的型安全性試験の導入が製品開発で推奨されます。
なぜ重要か
広く用いられる化粧品・医薬品賦形剤の臓器特異的毒性を空間メタボロミクスで可視化し、安全基準や規制評価に資する機序的エビデンスを提供します。
限界
- ヒトの化粧品曝露に比して高用量であり、外的妥当性に不確実性がある
- ゼブラフィッシュはヒトの薬物動態や経皮吸収を反映せず、低用量での用量反応が十分に示されていない
今後の方向性
ヒト関連曝露レンジの定量、経皮曝露モデルと用量反応試験の実施、ヒト心筋細胞・神経細胞系でのin vitro試験を統合し、リスク評価を高度化する必要があります。
研究情報
- 研究タイプ
- 症例集積
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - メタボロミクスを伴う前臨床の生体内実験毒性学研究(ゼブラフィッシュ)
- 研究デザイン
- OTHER