TAK-925(ダナボレキソン):オレキシン2型受容体作動薬は健常男性におけるオピオイド誘発性呼吸抑制と鎮静を軽減し、鎮痛には影響しない
総合: 88.5革新性: 9インパクト: 9厳密性: 9引用可能性: 8
概要
レミフェンタニル誘発性呼吸抑制下の健常男性13例を対象とした二重盲検クロスオーバー第1相試験で、オレキシン2型受容体作動薬ダナボレキソンは分時換気量・1回換気量・呼吸数を有意に増加させ、鎮静を低下させたが、疼痛耐性は変化しなかった。効果は投与終了後も持続し、有害事象は軽微であった(不眠一過性1例)。
主要発見
- ダナボレキソンは分時換気量を低用量・高用量でそれぞれ8.2および13.0 L/分増加させ、プラセボに対し有意であった(P < 0.001)。
- 鎮静は低下(VAS −29.7 mm、RASS +0.4)し、疼痛耐性はプラセボと差がなかった。
- 呼吸指標の改善は投与終了後も持続し、有害事象は軽微で不眠の一過性発現が1例にみられた。
臨床的意義
患者集団(手術患者、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性オピオイド使用者)で検証されれば、オレキシン2型作動薬は鎮痛や離脱を損なわず換気を増強し、オピオイド誘発性呼吸抑制の救急・予防薬となり得る。
なぜ重要か
本研究は、周術期や過量投与の主要な合併症であるオピオイド誘発性呼吸抑制に対し、鎮痛を温存する機序的に新規な薬理学的対策を示した。ナロキソン以外の選択肢を提示し、周術期救急や術後安全性を変革し得る。
限界
- 健常男性13例と小規模で、臨床集団への一般化に限界がある。
- 第1相で短期評価にとどまり、標準拮抗薬(例:ナロキソン)との比較がない。
今後の方向性
周術期および高リスク患者(睡眠時無呼吸、高齢、オピオイド耐性)でのランダム化試験、標準治療との比較、最適用量・安全性(不整脈・過覚醒)の検証、過量投与への適用評価が必要。
研究情報
- 研究タイプ
- ランダム化比較試験
- 研究領域
- 治療
- エビデンスレベル
- II - 健常志願者における第1相の二重盲検プラセボ対照クロスオーバーRCT
- 研究デザイン
- OTHER