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シングルセルRNAシーケンスと機械学習によるせん妄の免疫景観の解明:精密診断・治療に向けて

Psychogeriatrics : the official journal of the Japanese Psychogeriatric Society2025-01-16PubMed
総合: 74.5革新性: 8インパクト: 7厳密性: 7引用可能性: 8

概要

本症例対照研究は、末梢血におけるPI3K–Akt経路関連遺伝子(IL6、IL6R、CHRM2、NOS3、NGFの上昇とIGF1の低下)を術後せん妄の予測・診断バイオマーカー候補として同定し、RT-qPCRとscRNA-seqで免疫細胞サブセットにわたり検証しました。機械学習により識別性能が示され、臨床応用可能性が支持されました。

主要発見

  • バルクRNA-seqでPOD群は対照群に比べ、CHRM2、IL6、NOS3、NGF、IL6Rが上昇し、IGF1が低下していました。
  • 独立コホート(n=60)のRT-qPCRおよびT細胞・B細胞・NK細胞・樹状細胞・単球にわたるscRNA-seqで、これらの所見が検証されました。
  • 機械学習とROC解析により、当該遺伝子群がPODの予測・診断に有用であることが示されました。

臨床的意義

前向き検証が進めば、術前・術後早期の血液検査でこれら免疫遺伝子シグネチャーを評価し、せん妄リスク層別化、予防介入、モニタリングや抗炎症戦略の個別化に役立つ可能性があります。

なぜ重要か

周術期医療の重要な未充足ニーズであるPODの診断に対し、免疫学的血中バイオマーカーパネルを多面的に検証し機械学習で評価した点が高く評価されます。

限界

  • 症例対照デザインでサンプルサイズが比較的少なく、交絡の可能性がある
  • 多様な周術期集団での外部前向き検証と較正が未実施

今後の方向性

術前採血を含む多施設前向き検証、臨床リスクスコアとの統合、バイオマーカー指標に基づくせん妄予防介入試験が望まれます。

研究情報

研究タイプ
症例対照研究
研究領域
診断
エビデンスレベル
III - 無作為化ではない症例対照研究(分子学的検証あり)
研究デザイン
OTHER