腸内細菌叢は新生仔ラットの発達期麻酔神経毒性に影響を与える
総合: 77.5革新性: 9インパクト: 7厳密性: 7引用可能性: 8
概要
新生仔ラットにセボフルラン(生後7~13日に2.1%・2時間)を曝露すると、腸内細菌叢の破綻(Lactobacillus低下、Roseburia・Bacteroides増加)と空間学習障害が生じました。健常成体由来FMTはα多様性と酪酸産生菌(Firmicutes/Ruminococcus)を増加させ、糞中酪酸濃度上昇、海馬のヒストンアセチル化とBDNF mRNA誘導、神経炎症・アポトーシス抑制を伴い、逆転MWMでの学習成績を改善しました。
主要発見
- セボフルランで腸内細菌叢が変化:Roseburia上昇(効果量1.01)、Bacteroides上昇(1.03)、Lactobacillus低下(−1.20)。
- FMTはα多様性と酪酸産生菌(Firmicutes効果1.44、Ruminococcus 1.69)を増やし、糞中酪酸を上昇。
- 海馬のヒストンアセチル化とBDNF mRNA発現を誘導し、神経炎症と神経細胞アポトーシスを抑制。
- 逆転MWMでターゲット到達潜時(P=0.019)とターゲットゾーン通過回数(P<0.001)を改善。
臨床的意義
前臨床段階ではあるものの、小児麻酔後の神経発達リスク軽減に向け、プロバイオティクスやプレバイオティクス、食物繊維、短鎖脂肪酸補充など腸内細菌叢を標的とした介入の検討が支持されます。
なぜ重要か
発達期麻酔神経毒性を腸-脳軸に結び付け、酪酸に関連するエピジェネティック・神経栄養経路を調節因子として示し、微生物叢介入の予防的可能性を示唆します。
限界
- 新生仔ラットという前臨床モデルであり、臨床への直接外挿に限界
- FMTドナーのばらつきや、酪酸単独補充など代謝物特異的な因果検証が未実施
今後の方向性
無菌・ノトバイオートモデルでの因果検証、定義プロバイオティクス/短鎖脂肪酸介入の評価、腸内細菌叢修飾と麻酔後長期神経発達アウトカムの縦断研究が必要です。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序解明(動物実験)
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - 機序と治療標的を検討する前臨床動物研究
- 研究デザイン
- OTHER