循環停止後ドナー心臓移植における胸腹部常温区域灌流と静的低温保存：スペインの経験

概要

11施設の前向き全国コホートで、TA‑NRP＋静的低温保存によるDCDD心臓移植の30日・1年転帰はDNDDと同等であった。一次評価項目（1年全死亡または重度一次移植心機能不全）は差がなく、逆確率重み付けによる因果調整でもDCDDの超過リスクは示されなかった。

主要発見

• 一次複合評価（1年全死亡または重度一次不全）はDCDD 21.4%、DNDD 22.2%で同等（P=0.87）。
• 30日生存94.9%対93.7%、1年生存88.8%対87.3%で差なし（P=0.70）。
• 重度一次移植心機能不全は13.3%対15.0%で同等（P=0.67）。
• 逆確率重み付け解析でもDCDDによるリスク上昇は認めず（HR 0.97、95%CI 0.58–1.62、P=0.91）。

臨床的意義

心臓麻酔・移植チームは、抗凝固・灌流管理・臓器評価の標準化のもと、DCDDドナーにTA‑NRP＋静的低温保存を選択肢とし得る。短期転帰はDNDDと同等であることが期待できる。

限界

• 観察研究であり無作為化ではないため残余交絡の可能性。
• 短期転帰のみで長期の移植心機能持続性は未評価。

今後の方向性

長期生存・移植心機能の評価、TA‑NRP手技の標準化、TA‑NRPと体外灌流プラットフォームを用いた直接回収との比較検討が望まれる。