長期術後鎮痛を実現する小分子脂質で形成したロピバカインin situゲルの開発
総合: 75.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 6引用可能性: 8
概要
本前臨床研究は、ステアリン酸とロピバカインの疎水性イオンペアをグリセリルモノステアレートin situゲルに組み込み、マウスで複数日間持続する鎮痛とバースト放出の回避を示した。組織学・血液学検査でも安全性が支持され、術後疼痛に対する単回長時間作用型局所麻酔の新規プラットフォームとして有望である。
主要発見
- ロピバカイン–ステアリン酸の疎水性イオンペア(SA‑ROP HIP)をグリセリルモノステアレートと組み合わせたin situゲル(SA‑ROP‑GMS)はバースト放出を回避した。
- マウス疼痛モデルで単回投与により複数日(約10日)にわたり鎮痛が持続した。
- 組織学および血液生化学検査でSA‑ROP‑GMSの全身毒性は示されなかった。
- 使用材料はいずれも小分子で製造容易性とコスト面で有利であった。
臨床的意義
ヒト応用が実現すれば、単回投与の長時間作用末梢神経ブロックや創部浸潤が可能となり、オピオイド需要、カテーテル使用、再投与頻度の削減が期待できる。臨床導入前にヒトでの薬物動態・安全性および局所組織適合性の厳格な検証が必要である。
なぜ重要か
単回投与で約1週間の局所鎮痛を可能にする安価でスケーラブルな製剤は、周術期のオピオイド使用と資源負担の軽減に資する可能性が高い。
限界
- 前臨床(マウス)データであり、ヒトでの薬物動態、局所組織影響、用量スケーリングは不明。
- 長期の局所神経毒性やデポ製剤特有の合併症は未評価。
今後の方向性
GLP毒性試験、大動物での神経ブロック評価、ヒト第I相試験によりPK/PD、安全性、有効性を確立し、リポソーマルブピバカインやカテーテル法との比較検討を行う。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 治療
- エビデンスレベル
- V - 前臨床の動物実験でありヒト対象は含まれない
- 研究デザイン
- OTHER