ヘパラン硫酸はSTAT3シグナルを介してタイトジャンクションと相乗的に作用し、内皮バリアを維持して肺傷害の進展を防ぐ
総合: 75.5革新性: 8インパクト: 7厳密性: 8引用可能性: 6
概要
LPS肺傷害モデルおよびHUVECにおいて、グリコカリックスのヘパラン硫酸を保持・補充するとSTAT3リン酸化が抑制され、タイトジャンクション障害と血管漏出が減少した。トランスクリプトーム解析はSTAT経路の関与を示し、STAT3介入はオクルディン/ZO-1の低下と透過性亢進を改善した。HS–STAT3軸は内皮バリア保護と肺水腫軽減の標的となり得る。
主要発見
- LPS傷害は6時間でピークに達し、FITC-アルブミン漏出、HS脱落、オクルディン/ZO-1障害が最大となった。
- HSの保護や外因性HS補充により、HUVECおよびマウスでタイトジャンクション障害と血管透過性が低下した。
- mRNAシークエンスでSTAT経路が示唆され、STAT3リン酸化の抑制がバリア障害を改善した。
- HSはSTAT3を介してタイトジャンクション蛋白を調節し、オクルディンおよびZO-1プロモーターへの結合が示唆された。
臨床的意義
グリコカリックス保護(HS模倣体など)やSTAT3制御を目的とした治療は、ARDSでの内皮バリア維持と肺水腫軽減に寄与し得る。HS/STAT3標的戦略の橋渡し研究を後押しする。
なぜ重要か
本研究はグリコカリックスの保全をSTAT3を介したタイトジャンクション制御と結び付け、ARDSにおける内皮安定化の機序的・創薬可能な経路を示した。複数の実験系を統合し病態理解を前進させている。
限界
- 前臨床のLPSモデルはヒトARDSの多様性を完全には再現しない可能性がある
- STAT3のプロモーター結合の直接証拠は示唆的で決定的ではない
今後の方向性
HS模倣体やSTAT3調節薬を用いた橋渡しモデルおよび早期ARDS臨床試験の実施、患者内皮組織・バイオマーカーにおけるHS–STAT3シグネチャの検証。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - 動物・細胞モデルによる前臨床の機序的エビデンス
- 研究デザイン
- OTHER