急性呼吸窮迫症候群における鎮静戦略の評価:吸入薬と静注薬の比較メタアナリシス
総合: 74.0革新性: 7インパクト: 7厳密性: 8引用可能性: 7
概要
PROSPERO登録・PRISMA準拠のメタアナリシス(7研究・1,349例)により、吸入揮発性麻酔薬は静注薬に比べICU在室日数と人工呼吸期間を短縮しましたが、死亡率差はありませんでした。人工呼吸器離脱日数の減少やPaCO₂上昇・pH低下といったガス交換の変化が伴い、メリットとトレードオフが示唆されます。
主要発見
- PRISMA準拠・PROSPERO登録のもと、吸入鎮静と静注鎮静を比較した7研究(1,349例)が対象。
- 吸入鎮静はICU在室日数を短縮(MD -2.07日、95%CI -3.72~-0.41、p=0.01)。
- 吸入鎮静は人工呼吸期間を短縮(MD -2.62日、95%CI -4.48~-0.76、p=0.006)。
- 吸入鎮静は人工呼吸器離脱日数が少ないことと関連(MD -1.82、95%CI -3.41~-0.24、p=0.02)。
- 死亡率差はなし(p=0.18)。Day1のPEEP改善がみられた一方、PaCO₂上昇と動脈pH低下を認めた。
臨床的意義
吸入揮発性麻酔薬はICU在室および人工呼吸期間の短縮に寄与し得ますが、高二酸化炭素血症やアシドーシスに留意し、人工呼吸器離脱日数減少の可能性も考慮すべきです。プロトコール化した選択とモニタリングが有益性の最大化とリスク低減に役立ちます。
なぜ重要か
肺保護的換気を要するARDSにおける鎮静選択に直結する比較エビデンスを統合しています。登録済みプロトコルとバイアス評価により信頼性が高い点も重要です。
限界
- 異質性があり、ランダム化試験と観察研究が混在
- 鎮静デバイスや臨床プロトコールによる交絡の可能性、死亡率に関する情報は限定的
今後の方向性
標準化した吸入薬対静注薬プロトコールを比較する多施設ランダム化試験を実施し、人工呼吸器離脱日数、死亡、せん妄など患者中心アウトカムと生理学的指標を評価する必要があります。
研究情報
- 研究タイプ
- メタアナリシス
- 研究領域
- 治療
- エビデンスレベル
- II - ランダム化試験と観察研究を含むシステマティックレビュー/メタアナリシスであり、過程アウトカムに対する中等度~高水準のエビデンス。
- 研究デザイン
- OTHER