SIRT6は内皮細胞においてVEGFAの脱ミリストイル化を介して分泌を高め、血管新生を促進する
総合: 77.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 7引用可能性: 7
概要
内皮細胞におけるSIRT6はVEGFAを脱ミリストイル化して分泌を高め、低酸素下での遊走・管形成を促進する。SIRT6欠損で血管新生は低下し、SIRT6過剰発現はALK14誘発の障害を回復させ、鍵となる活性が脱アセチル化ではなく脱ミリストイル化であることを示した。
主要発見
- 内皮特異的SIRT6欠損はマウスの血管新生を減弱させ、SIRT6は内皮細胞の遊走と管形成を促進した。
- SIRT6は低酸素下で細胞内VEGFAと全体の蛋白質ミリストイル化を調節し、ノックダウンやALK14処理でVEGFA分泌が低下した。
- CLICK-IT法によりVEGFAがSIRT6のミリストイル化基質であることを同定し、SIRT6は脱アセチル化ではなく脱ミリストイル化によりVEGFA分泌を高めた。
- SIRT6過剰発現はALK14処理で生じた内皮の血管新生活性低下を回復させた。
臨床的意義
SIRT6の脱ミリストイル化活性を標的化することで、虚血性心疾患や末梢虚血における治療的血管新生の制御が可能となる可能性がある。一方で、SIRT6全般の操作がVEGFA生物学に影響し得る点に注意を要する。
なぜ重要か
SIRT6によるVEGFAの脱ミリストイル化という未解明の翻訳後修飾機序を明らかにし、エピジェネティック酵素活性と血管新生を結び付けた点で革新的であり、虚血性心血管疾患の新たな治療軸を示唆する。
限界
- 臨床検証を伴わない前臨床研究である
- SIRT6標的化の長期安全性や多様なin vivoモデルでの検証が未実施
今後の方向性
ヒト組織および虚血モデルでの検証、選択的SIRT6脱ミリストイル化調節薬の開発、大動物モデルでの治療的血管新生と安全性評価が求められる。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - 臨床転帰を伴わない前臨床の機序的エビデンス
- 研究デザイン
- OTHER