単球および間質マクロファージは低酸素性肺高血圧に寄与する
総合: 87.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 9引用可能性: 8
概要
低酸素性PHのマウスモデルでは、住居性間質マクロファージが増殖しCCL2を産生し、リクルートされたCCR2陽性マクロファージがトロンボスポンジン-1を発現してTGF-βを活性化し、血管病変を惹起する。単球リクルート(CCL2中和、CCR2欠損)の遮断でPHは抑制される。人での高地登山ではTSP-1/TGF-βが上昇するがデキサメタゾン予防で抑制され、マウスでも同様にCCL2/CCR2+リクルートが減弱した。
主要発見
- 低酸素暴露マウスでは、CCL2を発現する住居性間質マクロファージの増殖と、TGF-βを活性化するトロンボスポンジン-1を発現するCCR2陽性マクロファージのリクルートが認められた。
- CCL2中和抗体や骨髄のCCR2欠損により単球リクルートを阻害すると、低酸素性肺高血圧は抑制された。
- ヒトの低地(225 m)から高地(3500 m)への登山で血漿トロンボスポンジン-1とTGF-βが上昇し、デキサメタゾン予防でこの上昇は抑制された。マウスでもデキサメタゾンはCCL2およびCCR2+単球リクルートを抑制した。
臨床的意義
CCR2/CCL2遮断やTSP-1/TGF-βシグナルの調節といった治療標的の検討を後押しし、高地曝露など特定状況での低酸素関連PHリスクをステロイド予防で軽減し得る可能性を示す(臨床試験の検証が必要)。
なぜ重要か
低酸素性PHにおける標的可能なマクロファージ間クロストークおよびサイトカイン軸(CCL2/CCR2、TSP-1/TGF-β)を同定し、マウスの機序と高地登山時のヒト生理、さらに修飾可能な介入(ステロイド)を結び付けた。
限界
- 低酸素モデルから多様なPH病因への一般化には不確実性がある。
- ステロイド予防は全身性の副作用を伴い得るため、最適な標的・タイミング・期間は臨床での検証を要する。
今後の方向性
低酸素関連PHにおけるCCR2/CCL2軸阻害やTSP-1/TGF-β調節の臨床試験、患者選択と反応予測のバイオマーカーの確立、ステロイド代替戦略の検討が求められる。
研究情報
- 研究タイプ
- コホート研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- III - 観察的ヒトデータに制御された動物機序実験を組み合わせたエビデンス。
- 研究デザイン
- OTHER