KCNB1近傍の機能獲得型エンハンサー変異は家族性ST低下症候群を引き起こす
総合: 87.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 9引用可能性: 8
概要
20家系67例でKCNB1下流18 kbのレアな非コードエンハンサー変異が同定され、常染色体優性のST低下表現型と完全共分離しました。変異はMEF2結合部位を新生して転写活性を高め、dCas9操作や4C解析によりKCNB1がこの座位で一貫して制御されることが示され、人における心電生理・不整脈発生で初めてKCNB1が関与することが確立されました。
主要発見
- KCNB1下流18 kbのレアな非コードエンハンサー変異が20家系でFSTDと完全共分離し、完全浸透度を示した。
- 当該変異はMEF2結合サイトを新生し転写活性を増強、dCas9活性化/抑制アッセイでKCNB1が一貫して制御される唯一の遺伝子であることが示唆された。
- 4C解析により当該座位とKCNB1プロモーターの物理的相互作用が心筋細胞およびヒト筋組織で確認された。
臨床的意義
ST低下を呈する家族性心電図症候群では、KCNB1近傍の非コード制御変異の遺伝学的検査が考慮されます。本機序は精密診断やエンハンサー–プロモーター相互作用の標的化といった新規治療戦略の端緒となります。
なぜ重要か
非コードの機能獲得型エンハンサー変異がKCNB1を介して家族性心電図表現型を惹起することを初めて示し、コーディング領域外を含む不整脈遺伝学の枠組みを再定義します。
限界
- ヒト心内膜組織での発現解析では差が検出されず、組織の不均一性が影響した可能性がある。
- 電気生理学的表現型のin vivo動物モデルでの検証がない。
今後の方向性
エンハンサー異常に起因するKCNB1依存性不整脈発生を検証するin vivoモデルの構築と、家族性心電図症候群における制御領域変異を網羅する診断パネルの評価が必要です。
研究情報
- 研究タイプ
- 症例集積
- 研究領域
- 病態生理/診断
- エビデンスレベル
- IV - 複数家系を対象とした観察的遺伝学研究(機能的検証を伴う)
- 研究デザイン
- OTHER