腸内細菌叢–胆汁酸–TGR5軸は血小板活性化とアテロ血栓症を調節する
総合: 90.0革新性: 9インパクト: 9厳密性: 9引用可能性: 9
概要
冠動脈疾患患者ではデオキシコール酸が低下し、Bacteroides vulgatusが少ないことから胆汁酸代謝の破綻が示唆された。TGR5阻害薬およびTGR5欠損マウスを用いた検討で、DCAが血小板TGR5を介してアゴニスト誘発性の血小板活性化と血栓形成を抑制することを示した。DCA、B. vulgatus、健常者由来糞便の経口投与は、ApoE欠損アテローム性動脈硬化マウスで血小板過反応と血栓形成を低減した。
主要発見
- 冠動脈疾患では血清デオキシコール酸(DCA)が低下し、Bacteroides vulgatusが減少しており、胆汁酸代謝異常が示唆される。
- DCAは血小板TGR5を介してアゴニスト誘発性の血小板活性化と血栓形成を抑制し、TGR5阻害や遺伝学的欠損で効果は失われる。
- DCA、B. vulgatus、健常者糞便の経口投与は、ApoE欠損アテロ硬化マウスで血小板過反応と血栓形成を抑制する。
臨床的意義
現時点では前臨床段階だが、血小板TGR5の標的化やDCA補正(微生物叢・胆汁酸調節など)は、既存抗血小板薬に加える新たな抗血栓補助療法になり得る。臨床での有効性・安全性検証が必要である。
なぜ重要か
本研究は腸内細菌叢–胆汁酸–血小板軸を解明し、抗血栓標的としてTGR5を特定した。アテロ血栓症抑制に向けた微生物叢・胆汁酸ベースの新規戦略を切り拓く。
限界
- ヒト介入データがなく、臨床での有効性・安全性は未確立
- アブストラクトではヒトのサンプル規模やサブグループ特性が不明で、一般化可能性の検証が必要
今後の方向性
血栓リスクの高い冠動脈疾患に対するTGR5作動薬や胆汁酸・微生物叢調節の早期臨床試験を実施し、用量設定、安全性、反応性表現型を同定。標準抗血小板療法との併用効果も検討する。
研究情報
- 研究タイプ
- 症例対照研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- III - ヒト症例対照所見に加え、遺伝学的・薬理学的検証を伴う機序研究
- 研究デザイン
- OTHER