間葉系幹細胞が分泌するBDNFはERK1/2経路を活性化して加齢卵子の質と発生能を改善する
総合: 83.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 8引用可能性: 8
概要
ヒト臍帯MSCの分泌物は老齢マウス卵子の質を改善し、有効因子としてBDNFを同定しました。BDNFはERK1/2を活性化し、DAZL・BTG4を増加させて紡錘体の整合性や母体RNAクリアランスを改善し、異数性を低減しました。ヒト加齢卵子でも受精率と胚盤胞形成率を上昇させました。
主要発見
- MSC分泌物は老齢マウス卵子で第一極体排出、紡錘体形成、母体mRNA分解を改善し、異数性を低減。
- BDNF中和で効果は消失し、組換えBDNFで効果を再現。
- 機序:ERK1/2活性化によりDAZLとBTG4発現が上昇。
- 卵巣内投与で卵子質と初期胚発生が改善。
- ヒト加齢卵子の受精率と胚盤胞形成率がBDNFで上昇。
臨床的意義
BDNFやMSC由来製剤は、高年妊娠での体外受精における卵子能力向上の補助療法候補となり得ます。ERK1/2活性化やDAZL/BTG4などの経路マーカーは反応予測に有用です。
なぜ重要か
定義されたパラクリン因子(BDNF)がERK1/2を介して加齢卵子の欠損を可逆的に改善することを、ヒト卵子データも含めて示し、高年妊娠のART補助療法への道を拓きます。
限界
- 前臨床段階であり、臨床での安全性、用量、卵巣内送達法は未確立。
- サンプルサイズや長期子孫予後は未報告。
今後の方向性
用量・送達(局所/全身)の最適化、大動物での安全性・有効性評価、分子応答マーカーを組み込んだ早期臨床試験の設計が必要です。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 病態生理/治療
- エビデンスレベル
- V - ヒト卵子in vitro検証を含む前臨床の機序・トランスレーショナルエビデンス
- 研究デザイン
- OTHER