性ホルモン療法中の腎機能変化の機序の解明
総合: 80.0革新性: 8インパクト: 8厳密性: 8引用可能性: 8
概要
女性化療法は糸球体圧を上げずにmGFRと腎灌流を増加させ、尿細管障害マーカーを低下させました。男性化療法では尿YKL-40と血漿TNFR-1が上昇。プロテオミクスにより、エストラジオールは腎保護的タンパク発現と関連し、テストステロンは逆方向のプロファイルと関連しました。
主要発見
- 女性化療法でmGFRが+3.6%、腎灌流が+9.1%増加(いずれもP<0.05)し、糸球体圧は上昇しなかった。
- 尿中NGAL、EGF、MCP-1、YKL-40などの尿細管障害マーカーが42–58%低下した。
- 男性化療法ではmGFR/灌流は不変だが、尿YKL-40(+134%)と血漿TNFR-1(+8%)が上昇した。
- プロテオミクスで女性化療法49、男性化療法356の差次的発現タンパクを同定し、エストラジオールはSFRP4、SOD3、TSG-6、アグリンなど腎保護的タンパクと正相関した。
臨床的意義
性ホルモン療法中は腎機能と尿細管障害バイオマーカーのモニタリングが推奨されます。エストラジオールは腎保護的、一方テストステロンは障害関連シグナルを増加させ得るため、個別化した監視とリスク低減策が必要です。
なぜ重要か
測定GFRと包括的なバイオマーカー/プロテオミクス解析により、性ホルモンが腎に及ぼす機序的影響を示し、性別違和治療中の腎リスク評価と性差に基づく精密医療に資する知見です。
限界
- 対象数が少なく(n=44)、追跡が短期(3カ月)のため長期的推論に限界。
- 観察研究であり、抗アンドロゲンの種類や用量差など残余交絡の可能性。
今後の方向性
より大規模・長期の集団で腎転帰と用量反応を評価し、ホルモン調整や腎保護併用戦略の介入試験を検討する。
研究情報
- 研究タイプ
- コホート研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- III - 直接的な生理測定とプロテオミクスを伴う前向き観察コホート
- 研究デザイン
- OTHER