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肝インスリンシグナルによる糖・脂質代謝の空間的制御

Cell metabolism2025-04-18PubMed
総合: 88.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 9引用可能性: 9

概要

肝インスリンシグナルをゾーン特異的に破綻させると、門脈域の抵抗性は糖新生を増やす一方で脂質合成と脂肪肝を抑制し、中心静脈域の抵抗性は血糖制御を損なわずに中心静脈域ステアトーシスを減少させた。中心静脈域抵抗性では筋への解糖フラックスの振り替えが血糖恒常性維持に寄与した。

主要発見

  • 門脈域インスリン抵抗性は糖新生とインスリン上昇を招く一方、脂質合成を低下させ高脂肪食誘発の脂肪肝を抑制した。
  • 中心静脈域インスリン抵抗性は、肝から筋への解糖代謝のシフトを介して血糖恒常性を維持しつつ、中心静脈域ステアトーシスを減少させた。
  • 肝代謝におけるインスリン作用はゾーン特異的であり、ゾーン別シグナルの選択的調節により脂肪肝と高血糖の切り離しが可能となる。

臨床的意義

前臨床段階ではあるが、中心静脈域肝細胞のインスリンシグナルやその下流適応を模倣する介入は、2型糖尿病や脂肪性肝疾患において血糖を悪化させずに脂肪肝を抑える戦略となり得る。

なぜ重要か

肝内ゾーン別のインスリン作用を解明し、血糖悪化なく脂肪肝を軽減できる治療標的の可能性を示した。肝インスリン抵抗性が一様に高血糖と脂質合成を促進するという従来概念に一石を投じる。

限界

  • マウスモデルの結果であり、ヒトへの外挿可能性は未検証。
  • Creドライバーのオフターゲットや時間的解像度の限界が十分に検討されていない。

今後の方向性

中心静脈域インスリンシグナルを選択的に調節する薬理・遺伝学的戦略を大型動物やヒト組織で検証し、単一細胞空間オミクスにより脂肪肝と血糖の切り離しに関与する下流経路を精緻化する。

研究情報

研究タイプ
症例対照研究
研究領域
病態生理
エビデンスレベル
IV - 動物モデルにおける良好に管理された機序解明実験
研究デザイン
OTHER