ヒストン脱メチル化酵素KDM6Bは閉塞性睡眠時無呼吸と特発性肺線維症を結び付ける
FASEB journal : official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology•2025-01-09•PubMed
総合: 79.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 7引用可能性: 8
概要
KDM6BはヒトIPF肺および実験モデルで上昇し、間欠的低酸素によりその発現と線維化プログラムは一層増強された。KDM6B阻害は線維化を軽減し、筋線維芽細胞の活性化・遊走を抑え、NOX4と酸化ストレスを低下させた。OSAがIPF進展を悪化させる機序の中核分子として、KDM6Bは有望な治療標的となる。
主要発見
- KDM6B発現はIPF肺、ブレオマイシン投与マウス、TGF-β1刺激筋線維芽細胞で増加していた。
- 間欠的低酸素は線維化と筋線維芽細胞活性化を増悪させ、KDM6B発現をin vivo・in vitroでさらに上昇させた。
- KDM6B阻害は線維化、線維芽細胞の活性化・遊走、NOX4依存の酸化ストレスを低減した。
臨床的意義
臨床応用が進めば、KDM6B阻害は特にOSA合併IPF患者の線維化進行を抑制し得る。また、線維性肺疾患でOSAの積極的な診断・治療を後押しする根拠となる。
なぜ重要か
睡眠呼吸障害と肺線維症を結ぶ機序を提示し、in vivoで有効性を示す創薬可能なエピジェネティック標的(KDM6B)を同定した点で重要である。治療選択肢が乏しいIPFの新規治療戦略を拓く。
限界
- 前臨床段階であり、KDM6B阻害の臨床的有効性・安全性は未検証。
- KDM6B標的化の特異性やエピジェネティックなオフターゲット影響の精査が必要。
今後の方向性
線維性肺疾患(OSA合併・非合併)でのKDM6B阻害の早期臨床試験、KDM6B/NOX4シグネチャーなどの患者選択バイオマーカーの確立、既存抗線維化薬やOSA治療との併用戦略の検討が望まれる。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序解明研究
- 研究領域
- 病態生理/治療
- エビデンスレベル
- V - 動物・細胞モデルによる前臨床の機序的エビデンス。
- 研究デザイン
- OTHER