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POU3F3のリン酸化による核移行はATP5PF転写とATP産生を加速し非小細胞肺癌の増殖を促進する

Advanced science (Weinheim, Baden-Wurttemberg, Germany)2025-02-11PubMed
総合: 81.5革新性: 9インパクト: 7厳密性: 8引用可能性: 8

概要

RAS変異NSCLCにおいて、ERK1はPOU3F3のS393をリン酸化し、インポーチンβ1を介した核移行を可能にする。核内POU3F3はATP5PFプロモーターに結合して発現とATP産生を増加させ、細胞増殖と遊走を促進する。これにより腫瘍進展を駆動するRAS–POU3F3–ATP5PF軸が定義された。

主要発見

  • RAS変異NSCLCでPOU3F3はERK1依存的にS393がリン酸化され、インポーチンβ1を介して核移行する。
  • 核内POU3F3はATP5PFプロモーターに結合し、ATP5PF転写と細胞ATP産生を増加させる。
  • ATP5PF/ATPの増加によりNSCLCの増殖・遊走が促進され、RAS–POU3F3–ATP5PF軸が規定された。
  • RNA-seqおよびChIP解析がPOU3F3による転写制御を機序的に裏付けた。

臨床的意義

RAS変異NSCLCにおけるOXPHOS依存性を断つため、ERK1–POU3F3経路、核内移行、ATP5PFのいずれかを標的化する治療戦略が考えられる。OXPHOS阻害薬とRAS/ERK経路阻害の併用の理論的根拠にもなる。

なぜ重要か

腫瘍性RASシグナルとOXPHOS亢進を薬剤標的化可能な転写軸で機序的に結び、RAS駆動NSCLCにおけるミトコンドリアエネルギー代謝の治療介入の道を拓く。

限界

  • 本抄録の範囲ではin vivo有効性データがなく、細胞株中心の前臨床エビデンスにとどまる
  • RAS非変異の文脈や患者間ヘテロジニティへの一般化は今後の検証が必要

今後の方向性

in vivoで軸の妥当性を検証し、ERK1–POU3F3相互作用・核移行経路・ATP5PFの薬剤標的可能性を評価、OXPHOS阻害薬とRAS/ERK阻害薬の併用をRAS変異NSCLCモデルで検討する。

研究情報

研究タイプ
基礎/機序研究
研究領域
病態生理
エビデンスレベル
III - NSCLC細胞モデルにおける前臨床機序実験研究
研究デザイン
OTHER