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パラミクソウイルスのマトリックス蛋白はMETTL3を再配向させ、ウイルス複製と免疫回避を二重に制御する

PLoS pathogens2025-12-01PubMed
総合: 84.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 8引用可能性: 9

概要

パラミクソウイルスはM蛋白によりMETTL3を核外へ移行させ、ウイルスN mRNAのm6A付加を高めつつ、宿主IFN-β mRNAのm6Aを低下させてIFN応答を抑制する。複数のパラミクソウイルスで保存された機序であり、エピトランスクリプトームを標的とする新たな治療戦略を示す。

主要発見

  • ウイルスM蛋白は核内METTL3に結合し、exportin-1依存的に細胞質へ移行させる機構はHPIV3、センダイ、ニパ、麻疹で保存されていた。
  • 細胞質のMETTL3はウイルスN mRNAの特定位点にm6Aを付加し、mRNA安定性とタンパク発現を増強。m6A部位変異ウイルスは複製が低下し、外因性N発現で部分回復した。
  • 核内METTL3の枯渇により宿主IFN-β mRNAのm6Aが減少しIFN-β発現が低下。METTL3の核外移行を阻止するとIFN-βのm6Aと発現が上昇した。

臨床的意義

臨床前段階だが、M蛋白によるMETTL3再局在化や選択的m6A付加を阻害することで、下気道感染を引き起こすヒトパラインフルエンザ等のパラミクソウイルスに対する広域抗ウイルス薬の創出が期待される。

なぜ重要か

複製促進と免疫回避を同時に制御する保存的エピトランスクリプトーム機序を解明し、METTL3の細胞内動態やm6A付加を標的とする新規抗ウイルス治療の道を拓くため重要である。

限界

  • 主にin vitroの機構研究であり、病原性や治療標的のin vivo検証が必要。
  • METTL3操作による宿主トランスクリプトームへのオフターゲット・全身影響の安全性評価が未実施。

今後の方向性

METTL3とM蛋白の相互作用やexportin-1依存的輸送を阻害する低分子やペプチドを開発し、パラミクソウイルス疾患動物モデルで有効性・安全性を検証する。

研究情報

研究タイプ
基礎/機構研究
研究領域
病態生理
エビデンスレベル
IV - 複数ウイルスを用いた逆遺伝学による機構研究であり、臨床アウトカムは伴わない。
研究デザイン
OTHER