エンテロバクチンは腸内細菌叢依存性のAhR活性化を阻害し、マウスにおける細菌性敗血症を助長する
総合: 88.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 9引用可能性: 9
概要
腸内細菌叢由来インドールがマクロファージのAhRを活性化して細菌排除と生存を高める一方、病原菌シデロフォアのエンテロバクチンはAhRシグナルを抑制して転帰を悪化させた。トリプトファン補充で生存が回復し、AhRを巡る腸内細菌叢・宿主・病原体の拮抗が示された。
主要発見
- 糞便微生物叢移植とトリプトファン代謝物(インドール類)はSerratia marcescens敗血症で生存率を上昇させた。
- マクロファージ特異的AhR欠損は細菌排除と生存を障害し、AhRの因果的役割を示した。
- 複数の病原体培養上清はin vitroでAhR活性化を抑制した。
- 分泌シデロフォアのエンテロバクチンはAhR活性化を阻害し、in vivoで敗血症死亡率を上昇させた。
- 経口または全身のトリプトファン補充で生存が改善した。
臨床的意義
前臨床結果ではあるが、抗菌薬適正使用や栄養介入による腸内細菌叢由来AhRアゴニストの保持、AhRアゴニスト投与やシデロフォア中和戦略の検討が示唆される。ヒト敗血症への応用には慎重な臨床研究が必要である。
なぜ重要か
腸内細菌代謝物と病原体シデロフォアがAhRを介して生存を左右する新たな治療標的軸を提示し、AhR標的治療やマイクロバイオーム介入の可能性を拓く。
限界
- 所見はマウスモデルと特定病原体に限られ、ヒトでの外的妥当性は未検証
- トリプトファンの用量・投与タイミングはそのまま臨床に適用できない可能性がある
今後の方向性
多様な前臨床敗血症モデルでAhRアゴニストやシデロフォア標的戦略を検証し、ヒトコホートでAhR関連代謝物バイオマーカーや食事介入の評価を行う。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - 前臨床の機序研究(マウス+in vitro検証)
- 研究デザイン
- OTHER