可溶性CD72は敗血症においてT細胞機能を同時に障害し炎症反応を増強する
総合: 87.0革新性: 9インパクト: 8厳密性: 9引用可能性: 8
概要
敗血症患者では可溶性CD72が上昇し、細胞表面CD72は低下した。外因性sCD72はマウス敗血症モデルで用量依存的に生存率を悪化させ、T細胞表面のCD100に結合して細胞内に入り、CD4+T細胞減少を含むT細胞機能を障害しつつ炎症反応を増強した。sCD72は敗血症における適応免疫抑制の機序的媒介因子と位置づけられる。
主要発見
- 敗血症患者(n=57)は健常対照(n=40)と比較して、血中sCD72が上昇し、免疫細胞の細胞表面CD72とCD72 mRNAは低下していた。
- 組換えsCD72の過剰投与はCLP敗血症マウスの死亡率を用量依存的に上昇させた。
- sCD72はT細胞表面のCD100に結合して細胞質内に入り、CD4+T細胞減少を含むT細胞機能を障害しつつ、炎症反応を増強した。
臨床的意義
sCD72は予後バイオマーカーとなり得るとともに、sCD72–CD100相互作用の遮断など免疫抑制反転の治療標的になりうる。また、sCD72を上昇させうる治療介入には注意が必要である。
なぜ重要か
可溶性免疫調節因子を敗血症のT細胞機能障害に直接結びつけ、ヒトとマウスで検証した機序的発見であり、バイオマーカーと治療標的の両面で意義が大きい。
限界
- 単施設かつ症例数が比較的少なく、外部検証が必要
- sCD72遮断などの治療介入試験は未実施
今後の方向性
多施設コホートでのバイオマーカー検証と経時変化の評価、sCD72–CD100経路阻害薬の前臨床・早期臨床試験での開発と検証が望まれる。
研究情報
- 研究タイプ
- 症例対照研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- III - 患者の症例対照解析に機序的な動物実験を加えたエビデンスであり、無作為化介入は未実施。
- 研究デザイン
- OTHER