S100A8およびS100A9の上昇は敗血症誘発性筋萎縮におけるミトコンドリア断片化を増悪させる
総合: 81.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 8引用可能性: 7
概要
本研究は、S100A8/A9がRAGEを介してDrp1リン酸化とミトコンドリア断片化を引き起こし、敗血症性筋萎縮を駆動することを示した。S100A8/A9の阻害、RAGE欠損、またはDrp1阻害はミトコンドリア障害と筋萎縮を軽減し、臨床データではΔSMIが60日死亡と関連した。
主要発見
- ΔSMIは敗血症患者の60日死亡の独立危険因子であった。
- マウス敗血症ではS100a8/a9の上昇とミトコンドリア障害を伴う骨格筋萎縮が生じた。
- S100a8/a9の阻害はミトコンドリア機能を改善し筋萎縮を軽減し、組換えS100a8/a9投与は両者を悪化させた。
- 機序的には、S100a8/a9がRAGEに結合してDrp1をリン酸化しミトコンドリア断片化を惹起し、RAGE欠損またはDrp1阻害でミトコンドリア形態と機能が回復した。
臨床的意義
S100A8/A9およびRAGE–Drp1軸の構成因子は、敗血症関連筋萎縮・筋力低下の予防・治療に向けたバイオマーカーおよび治療標的となり得る(ヒト介入研究の検証が前提)。
なぜ重要か
敗血症性筋症の基盤となる創薬可能な経路(S100A8/A9–RAGE–Drp1)を、臨床関連と厳密な機序検証を統合して提示した。今後の治療標的の確立に直結する。
限界
- 臨床パートは後ろ向きで症例数不明・交絡の可能性がある。
- S100A8/A9–RAGE–Drp1軸を標的としたヒト介入データがなく、トランスレーショナルギャップが残る。
今後の方向性
S100A8/A9のバイオマーカー妥当性を検証する前向き研究、および敗血症におけるICU獲得性筋力低下予防を目指すRAGE・S100A8/A9・Drp1調節薬の早期臨床試験。
研究情報
- 研究タイプ
- コホート研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- IV - 前臨床の機序研究に後ろ向き臨床関連を付随
- 研究デザイン
- OTHER