2-クロロヘキサデカン酸によるヒト肺微小血管内皮細胞タンパク質の修飾:RhoAは2-クロロヘキサデカン酸誘発性内皮活性化を媒介する
総合: 78.5革新性: 8インパクト: 7厳密性: 8引用可能性: 8
概要
クリック化2-ClHAプローブを用いてHLMVECにおける特異的修飾タンパク質を同定し、RhoAを中心とするネットワークが明らかとなった。RhoA阻害は2-ClHA誘発の内皮バリア障害とAng-2放出を抑制し、2-ClHAはRhoA活性を上昇させた一方、ヘキサデカン酸は効果を示さなかった。敗血症関連ARDSに関わる2-ClHA–RhoA軸が示唆される。
主要発見
- HLMVECにおいて2-クロロヘキサデカン酸で特異的に修飾される11種のタンパク質を同定し、RhoAはヘキサデカン酸では修飾されない特異的標的であった。
- RhoA阻害薬(Rhosin、C3)は2-ClHA誘発の内皮バリア障害とAng-2放出を抑制した。
- 2-ClHAはRhoA活性を上昇させたが、飽和脂肪酸であるヘキサデカン酸はRhoA活性化やバリア障害を引き起こさなかった。
臨床的意義
RhoAシグナルや上流のクロロ脂質産生を標的化することで、敗血症性ARDSにおける内皮障害やAng-2依存の血管漏出を軽減できる可能性がある。2-ClHAは内皮活性化のバイオマーカーとなり得る。
なぜ重要か
敗血症関連クロロ脂質を創薬可能な小型GTPase(RhoA)に機序的に結び付け、肺障害の中核である内皮機能障害に対する具体的標的経路を提示するため重要である。
限界
- 敗血症モデルでのin vivo検証がない培養内皮系の研究である
- 臨床アウトカムとの因果関係は、2-ClHAとARDS死亡の関連に依拠しており本研究内での検証はない
今後の方向性
敗血症/ARDS動物モデルで2-ClHA–RhoA軸とRhoA経路阻害の有効性を検証し、患者で2-ClHAと内皮障害マーカーを縦断的に測定する。
研究情報
- 研究タイプ
- 基礎/機序研究
- 研究領域
- 病態生理
- エビデンスレベル
- V - 一次ヒト内皮細胞でのプロテオミクスと機能阻害を用いた機序研究
- 研究デザイン
- OTHER