乾燥血を用いた質量分析によるタンパク質および翻訳後修飾の定量:タンザニア敗血症患者の縦断サンプリング
総合: 80.5革新性: 9インパクト: 8厳密性: 7引用可能性: 9
概要
本研究は乾燥血からプロテオーム、N-糖ペプチド、リン酸化ペプチドを統合定量するワークフローを確立し、血漿分離を要しない縦断的表現型解析を可能にしました。急性期・好中球主導の炎症シグネチャーを捉え、1か月での部分的解消と臨床指標との相関を示し、データは公開されています。
主要発見
- 乾燥血から約2,000蛋白と約8,000の翻訳後修飾(N-糖ペプチド・リン酸化ペプチド)の統合定量に成功し、各検体あたり約1.5時間のLC-MS/MSで96検体を解析しました。
- 来院時に急性期反応と好中球炎症シグネチャーが顕著で、28–42日で部分的に解消しました。
- 多数のアナライトがCRP、白血球数、Universal Vital Assessment重症度スコアと相関しました。
- 血漿・細胞成分の分離を回避して前分析的ばらつきを低減し、データはProteomeXchange(PXD060377)に公開されました。
臨床的意義
乾燥血ミクロサンプリングとMSの組み合わせは、コールドチェーン不要の分散型検査や経時的モニタリングを支え、得られたデータから導かれるターゲットパネルは実用的アッセイへ展開可能です。
なぜ重要か
乾燥血を用いたスケーラブルで現場適用可能なマルチオミクス基盤を提示し、前分析的ばらつきを低減しつつ、資源制約地域を含む大規模なバイオマーカー探索とモニタリングを可能にする点が重要です。
限界
- 単一国・症例数が限られており(38例)、一般化可能性や臨床転帰との関連解析に制約があります。
- 血漿ベース検査との直接比較がなく、死亡などの臨床転帰評価は行われていません。
今後の方向性
候補タンパク質/翻訳後修飾パネルの多施設大規模検証、血漿・血清検査とのベンチマーク、臨床実装に向けたターゲットMSや免疫測定法の開発が求められます。
研究情報
- 研究タイプ
- コホート研究
- 研究領域
- 診断
- エビデンスレベル
- III - 前向き観察コホートにおけるラボベースのマルチオミクス解析と臨床指標との相関
- 研究デザイン
- OTHER