麻酔科学研究週次分析
今週は麻酔科・集中治療領域で実臨床を変えるガイドライン改訂や実臨床試験が注目されました。SCCMはCCUSを用いた循環管理・容積管理を患者転帰改善とともに支持し、PADIS改訂はICU鎮静をデクスメデトミジン傾向へ導き動員・睡眠対策を強調、さらに多学会のカンジダ症ガイドラインは耐性増加に対応した管理指針を更新しました。持続可能性、AI診断支援、周術期認知リスク、ECMO等先端治療へのアクセスといった系統的テーマも浮上しています。
概要
今週は麻酔科・集中治療領域で実臨床を変えるガイドライン改訂や実臨床試験が注目されました。SCCMはCCUSを用いた循環管理・容積管理を患者転帰改善とともに支持し、PADIS改訂はICU鎮静をデクスメデトミジン傾向へ導き動員・睡眠対策を強調、さらに多学会のカンジダ症ガイドラインは耐性増加に対応した管理指針を更新しました。持続可能性、AI診断支援、周術期認知リスク、ECMO等先端治療へのアクセスといった系統的テーマも浮上しています。
選定論文
1. 成人重症集中治療超音波に関するSCCMガイドライン:2024年フォーカスアップデート
SCCMのフォーカスアップデートは2016年以降のエビデンスを総括し、敗血性ショック、急性呼吸困難/呼吸不全、心原性ショックでのCCUS使用を提案しています。特に、CCUSを用いた目標志向の体液管理は通常ケアと比較して死亡率の改善と関連し、訓練や品質管理、研究の必要性を強調しています。
重要性: ベッドサイド超音波の活用をハードアウトカム改善と結びつけたことで、ICUプロトコール、教育優先事項、CCUS導入のための資源配分に直接影響を与えます。
臨床的意義: ショックや呼吸不全の診療経路にCCUSを組み込み、体液・循環管理の個別化を図るとともに、CCUSの訓練・資格付与に投資し、影響と遵守を監視する品質ダッシュボードを整備すべきです。
主要な発見
- 敗血性ショック、急性呼吸困難/呼吸不全、心原性ショックでの管理にCCUS使用を提案。
- CCUSによる目標志向の体液管理は通常ケアと比べて死亡率改善と関連するエビデンスがある。
2. 成人ICU患者の疼痛・不安・興奮/鎮静・せん妄・不動・睡眠障害の予防と管理:臨床実践ガイドラインのフォーカスアップデート
PADISのフォーカスアップデートは、鎮静ではデクスメデトミジンをプロポフォールより条件付きで推奨し、強化された動員・リハビリと睡眠補助としてメラトニンを支持します。一方、不安にベンゾジアゼピン、せん妄に抗精神病薬の推奨は行っていません。推奨はGRADEに基づくもので、ICU鎮静と非薬物療法を精密化します。
重要性: 鎮静と動員に関する明確な推奨はICUの処方、看護ワークフロー、物品調達に変化をもたらし、せん妄や回復経路に波及効果を与えます。
臨床的意義: 可能であればデクスメデトミジン中心の鎮静を選択し、強化動員プロトコールを運用化し、睡眠補助としてメラトニンを検討する。明確な適応がない限りベンゾジアゼピンや抗精神病薬の常用は避ける。
主要な発見
- ICU鎮静でデクスメデトミジンをプロポフォールより条件付き推奨。
- 強化された動員・リハビリおよびメラトニンを推奨。ベンゾジアゼピン(不安)や抗精神病薬(せん妄)には推奨を出さない。
3. カンジダ症の診断と治療に関する世界ガイドライン:ECMM主導、ISHAMおよびASM協力による取り組み
国際的な多学会合同ガイドラインは、抗真菌薬耐性の増加や分類学の変更(例:Candida auris、フルコナゾール耐性C. parapsilosis)を踏まえ、侵襲性および粘膜皮膚型カンジダ症の診断・治療推奨を更新しました。ICUや周術期での実践的な指針を統合しています。
重要性: 抗真菌薬耐性と病原体再分類が進む局面で、ICUや周術期の予防・治療・適正使用に不可欠な世界的整合された推奨を提供するため重要です。
臨床的意義: 更新された診断アルゴリズムと抗真菌薬適正使用を導入し、C. aurisなど新興病原体に関する指針をICUプロトコールに組み込み、地域の耐性動向に応じて周術期予防を見直すべきです。
主要な発見
- 治療困難化するカンジダ種(例:Candida auris)と抗真菌薬耐性の増加を強調。
- 侵襲性・粘膜皮膚型カンジダ症に関する証拠に基づく統合的推奨をICU・周術期向けに提示。