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内分泌科学研究週次分析

3件の論文

今週の内分泌学文献は、代謝制御の翻訳研究と臨床応用に直結する迅速な臨床研究が目立ちました。主な機序報告として、摂食誘導性ミオカイン(feimin–MERTK)が血糖を調節すること、シャペロン駆動のTOM70挿入経路が熱産生を高め食餌誘発性肥満から保護することが示されました。無糖尿病の結石患者でエンパグリフロジンが尿中過飽和度を低下させた第2相試験は、近い将来の予防試験の道を開きます。

概要

今週の内分泌学文献は、代謝制御の翻訳研究と臨床応用に直結する迅速な臨床研究が目立ちました。主な機序報告として、摂食誘導性ミオカイン(feimin–MERTK)が血糖を調節すること、シャペロン駆動のTOM70挿入経路が熱産生を高め食餌誘発性肥満から保護することが示されました。無糖尿病の結石患者でエンパグリフロジンが尿中過飽和度を低下させた第2相試験は、近い将来の予防試験の道を開きます。

選定論文

1. 摂食誘導性ミオカインは糖代謝恒常性を調節する

88.5Nature metabolism · 2025PMID: 39747483

本研究は、摂食時に骨格筋から分泌されるミオカインfeiminを同定し、受容体MERTKに結合してAKTを活性化し、糖取り込みを増やし肝糖産生を抑制することを示しました。マウスではインスリンと相乗的に血糖を改善し、ヒトのMERTK変異(R466K)はfeimin結合を低下させ食後高血糖・高インスリンと関連しました。

重要性: ヒト遺伝学的関連と薬理学的相乗作用という翻訳可能性を伴った、これまで未知であった筋—肝の内分泌軸を明らかにし、食後血糖制御の標的化を可能にします。

臨床的意義: feimin–MERTKシグナルは食後血糖制御を強化する治療標的またはバイオマーカーになり得ます。MERTK多型はヒト検証後に個別化介入の層別化因子となる可能性があります。

主要な発見

  • feiminは摂食時に骨格筋から分泌されMERTKに結合する。
  • feimin–MERTKはAKTを活性化し糖取り込みを促進し肝糖産生を抑制する。
  • feiminとインスリンはマウスで相乗的に血糖を改善する。
  • ヒトMERTK R466K変異はfeimin結合を低下させ食後高血糖・高インスリンと関連する。

2. シャペロン介在性のミトコンドリア輸送受容体TOM70の挿入は食餌誘発性肥満から保護する

88.5Nature cell biology · 2025PMID: 39753947

ストレス誘導性シャペロンPPIDがTOM70の外側ミトコンドリア膜挿入を促進し、褐色脂肪の呼吸・熱産生を高めます。肥満マウスではこのPPID–TOM70経路が体温調節を維持し体重増加を抑制し、エネルギー消費を制御する新しいプロテオスタシスの制御点を示しました。

重要性: ミトコンドリア蛋白質挿入の新たなシャペロン依存制御点を明らかにし、熱産生と肥満リスクに直結するため、従来のホルモン経路とは別の抗肥満標的領域を開きます。

臨床的意義: 前臨床標的であり、PPID–TOM70制御の安全性と標的化可能性をヒトで検証したうえで、肥満や代謝症候群における適応的熱産生の増強に応用可能です。

主要な発見

  • PPIDはPPIase活性とTPRドメインを介してTOM70の外側ミトコンドリア膜挿入を促進する。
  • TOM70挿入は褐色脂肪の呼吸・熱産生機能を高める。
  • PPID–TOM70経路は寒冷や高カロリー負荷下で肥満マウスの体温と体重を調節する。

3. 無糖尿病のカルシウム結石および尿酸結石患者に対するエンパグリフロジン:無作為化第2相試験

85.5Nature medicine · 2025PMID: 39747681

二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第2相試験(n=53)で、エンパグリフロジン25 mgはカルシウム結石患者のリン酸カルシウム相対過飽和度を約36%、尿酸結石患者の尿酸相対過飽和度を約30%低下させ、短期投与で重篤な有害事象は観察されませんでした。無糖尿病結石に対する予防試験の根拠を与えます。

重要性: 無糖尿病患者の結石リスクを示す妥当な尿中代替指標を変えるためにSGLT2阻害薬をリポジショニングする根拠となる高品質なRCTであり、再発を評価する決定的試験の設計に直結します。

臨床的意義: エンパグリフロジンは無糖尿病のリン酸カルシウムおよび尿酸結石患者の予防候補となる。臨床的再発と長期安全性を評価する多施設長期試験が実施されるまで日常診療での一般導入は慎重に行うべきです。

主要な発見

  • エンパグリフロジンはカルシウム結石患者でリン酸カルシウム相対過飽和度を約36%低下させた。
  • 尿酸結石患者で尿酸相対過飽和度を約30%低下させた。
  • 短期のクロスオーバー投与期間中に重篤または事前定義の有害事象は観察されなかった。