メインコンテンツへスキップ

内分泌科学研究週次分析

3件の論文

今週は糖尿病の細胞治療、マイクロバイオーム酵素学、創傷治癒生物学にまたがる翻訳志向の重要な進展がありました。多能性幹細胞由来アイレットの再構築により全内分泌サブタイプが再現されin vivoで低血糖防御が得られ、AIワークフローは数十万件の腸内胆汁酸酵素をマッピングして新規骨格胆汁酸を発見し、ガレクチン3–インテグリンα5β1の相分離が糖尿病性血管新生を回復する薬理的標的であることが示されました。これらは安全なβ細胞代替、マイクロバイオームに基づく代謝介入、糖尿病合併症への局所治療の実現に近づけます。

概要

今週は糖尿病の細胞治療、マイクロバイオーム酵素学、創傷治癒生物学にまたがる翻訳志向の重要な進展がありました。多能性幹細胞由来アイレットの再構築により全内分泌サブタイプが再現されin vivoで低血糖防御が得られ、AIワークフローは数十万件の腸内胆汁酸酵素をマッピングして新規骨格胆汁酸を発見し、ガレクチン3–インテグリンα5β1の相分離が糖尿病性血管新生を回復する薬理的標的であることが示されました。これらは安全なβ細胞代替、マイクロバイオームに基づく代謝介入、糖尿病合併症への局所治療の実現に近づけます。

選定論文

1. 低血糖防御能を備えた内分泌サブタイプ完全再構成ヒト多能性幹細胞由来アイレットの構築

90Cell stem cell · 2025PMID: 40782792

著者らはα・β・δ・ε・γの5内分泌サブタイプを含むPSC由来アイレットを設計し、糖尿病マウスで高血糖是正に加え低血糖曝露を大幅に減らし、低血糖クランプ下での対調節反応を回復させることを示しました。

重要性: PSCアイレットに完全な内分泌構成を回復することで、β細胞代替後の主要な安全性課題である低血糖を解決できることを前臨床で初めて示し、より安全な細胞療法への道を開きます。

臨床的意義: 移植後の低血糖リスクを最小化するための内分泌サブタイプ比と力価基準を備えたPSCアイレット製品の開発を支持し、β細胞置換の前臨床から臨床への翻訳や試験設計に示唆を与えます。

主要な発見

  • α・β・δ・ε・γの5種の内分泌細胞を含むPSCアイレットをin vitroで強固に作製した。
  • 糖尿病マウスでは再構成PSCアイレットにより低血糖曝露が3%に低下し、非再構成群の59%と比較して大幅に改善した。
  • 低血糖クランプで、受容体における対調節反応の回復が示唆された。

2. AI支援パイプラインによる腸内細菌胆汁酸代謝酵素の同定

87Cell · 2025PMID: 40780197

AI支援ワークフロー(BEAUT)を用いて60万超の腸内微生物胆汁酸代謝酵素候補を予測・データベース化(HGBME)し、ADSなどの新規酵素を実験的に検証、未報告の骨格胆汁酸(3-acetoDCA)を同定して微生物相相互作用を調節することを示しました。

重要性: 腸内微生物の胆汁酸変換に関する包括的な酵素地図と公開資源を構築し、微生物胆汁酸化学を宿主生理に結ぶ機序研究と、新規酵素活性の操作へ導く基盤を提供しました。

臨床的意義: 胆汁酸プールを調整するマイクロバイオーム介入の基盤を提供し、将来的には代謝疾患の修飾、胆汁うっ滞の管理、標的プロバイオティクスや酵素阻害薬の開発につながる可能性があります。

主要な発見

  • BEAUT AIワークフローにより60万超の胆汁酸代謝酵素候補を予測し、HGBMEデータベースに収載した。
  • MABHやADSなどの新規酵素を実験的に検証し、ADSが生成する3-acetoDCAという未報告の骨格胆汁酸が微生物生態に影響することを示した。

3. 終末糖化産物により破綻するガレクチン3–インテグリンα5β1の液–液相分離が糖尿病性創傷治癒を障害する(げっ歯類)

87Nature communications · 2025PMID: 40775187

ガレクチン3はインテグリンα5β1と結合して液–液相分離コンデンセートを形成しFAKシグナルと血管新生を促進しますが、糖尿病では終末糖化産物がこの相互作用を阻害します。組換えガレクチン3をハイドロゲルで外用すると、糖尿病げっ歯類の創傷治癒と血管新生が回復し、全身的インスリン抵抗性は生じずインスリンと相乗しました。

重要性: 血管新生の相分離に基づく受容体機序を明確にし、糖尿病で障害されたこの機構に対する局所的治療概念(ガレクチン3外用)を実証的に提示し、in vivoでの有効性と代謝安全性データを示しました。

臨床的意義: 糖尿病性足潰瘍に対し、血管新生と治癒を回復する補助療法としてガレクチン3の外用製剤(ハイドロゲル等)を開発することを支持し、全身代謝影響を最小化する可能性があります。

主要な発見

  • ガレクチン3はインテグリンα5β1と液–液相分離コンデンセートを形成し、FAKリン酸化と血管新生を増強した。
  • 終末糖化産物はガレクチン3に結合してインテグリンα5β1との相互作用を阻害し、糖尿病条件で血管新生を障害した。
  • 組換えガレクチン3のハイドロゲル外用は糖尿病モデルの創傷治癒を回復し、全身的なインスリン抵抗性を招かなかった。