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呼吸器研究週次分析

3件の論文

今週は呼吸器領域で予防、機序、集団保健にまたがる重要な進展が報告されました。NEJMの大規模無作為化試験で、単回筋注のクレズロビマブが健康乳児のRSV下気道疾患と入院を大幅に予防しました。Natureの機序研究は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)がNET形成の直接的酵素ドライバーであることを示し、肺の炎症や血栓形成への示唆を与えます。Lancet Psychiatryのメタ解析は、重度精神疾患で呼吸器死亡が2倍以上に増大していることを明確に示しました。

概要

今週は呼吸器領域で予防、機序、集団保健にまたがる重要な進展が報告されました。NEJMの大規模無作為化試験で、単回筋注のクレズロビマブが健康乳児のRSV下気道疾患と入院を大幅に予防しました。Natureの機序研究は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)がNET形成の直接的酵素ドライバーであることを示し、肺の炎症や血栓形成への示唆を与えます。Lancet Psychiatryのメタ解析は、重度精神疾患で呼吸器死亡が2倍以上に増大していることを明確に示しました。

選定論文

1. 健康乳児におけるRSV疾患予防のためのクレズロビマブ

88.5The New England journal of medicine · 2025PMID: 40961446

3614例の無作為化プラセボ対照試験で、単回105 mg筋注のクレズロビマブは150日までのRSV関連医療受診下気道感染症を60.4%、RSV関連入院を84.2%減少させ、重篤有害事象はプラセボと同程度でした。

重要性: 単回投与の長時間作用型抗体が健康乳児のRSV疾患と入院を大幅に減少させうることを示す確固たる臨床エビデンスであり、季節性免疫予防政策に直接影響します。

臨床的意義: クレズロビマブを初回RSVシーズンを迎える乳児の季節性免疫予防の選択肢として導入する根拠を提供します。医療体制は物流、費用対効果、既存薬(例:ニルセビマブ)との比較を検討すべきです。

主要な発見

  • 105 mg筋注の単回投与でRSV関連医療受診下気道感染症が60.4%減少(95%CI 44.1–71.9)。
  • RSV関連入院は84.2%減少(95%CI 66.6–92.6)。

2. ミエロペルオキシダーゼはクロマチンを好中球細胞外トラップ(NET)へと変換する

85.5Nature · 2025PMID: 40963017

前臨床の機序研究で、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)がクロマチンをNETに変換する主要な酵素ドライバーであることを示し、肺障害・血栓・自己免疫に関連するNETosisの中核段階を明確化しました。

重要性: NET形成の直接的ドライバーとしてMPOを特定したことで、炎症性肺疾患やARDSに対するMPO/NETosis標的治療の分子学的根拠が得られました。

臨床的意義: ARDS、重症肺炎、敗血症などの肺障害や微小血栓を軽減するため、MPOおよびNETosis阻害薬の開発・臨床試験を支持します。

主要な発見

  • MPOがクロマチンをNETへ変換することを示し、NETosisの中核的酵素段階を解明した。
  • NET形成と肺の炎症・血栓形成に関わる病態との機序的連関を提供した。

3. 重度精神疾患患者における呼吸器疾患死亡率:総合および個別診断を対象とした大規模システマティックレビューとメタ解析

84The Lancet. Psychiatry · 2025PMID: 40967730

83件のコホート研究(約484万人の重度精神疾患者)を統合したメタ解析で、重度精神疾患全体は一般人口に比べ呼吸器関連死亡が2.28倍に上昇し、統合失調症で最大(RR 2.60)でした。

重要性: 脆弱で支援が不足する集団における大きな死亡格差を定量化し、禁煙、ワクチン、検診など統合的呼吸予防の明確なターゲットを示しました。

臨床的意義: 精神医療の経路に呼吸予防を組み込み、積極的な禁煙支援、ワクチン接種、スパイロメトリーによるスクリーニング、適格者への肺がん検診、呼吸リハビリのアクセス向上を実施すべきです。

主要な発見

  • 重度精神疾患全体で呼吸器関連死亡のRRは2.28(95%CI 2.02–2.56)。
  • 統合失調症で最も高く(RR 2.60)、双極性障害や大うつ病性障害でもリスク増加を認めた。