メインコンテンツへスキップ
日次レポート

麻酔科学研究日次分析

2026年02月09日
3件の論文を選定
109件を分析

109件の論文を分析し、3件の重要論文を選定しました。

概要

本日の注目は3編です。短時間手術を受ける高齢者で、オピオイドフリー全静脈麻酔(OFA)が主要術後有害事象を減少させることを示したランダム化試験、周術期の絶飲食を安全に緩和し透明液摂取の拡大と術後早期経口再開を推奨する国際コンセンサス、そして胸腔鏡手術後にリポソーマルブピバカインが短期鎮痛を改善する一方で機能的回復は改善しないとするメタ解析です。

研究テーマ

  • 高齢者における周術期合併症低減を目的としたオピオイドフリー麻酔
  • 透明液の緩和的摂取と術後早期経口再開を含む周術期絶飲食の近代化
  • 胸腔鏡手術後鎮痛における徐放性局所麻酔薬の活用

選定論文

1. 短時間手術を受ける高齢患者におけるオピオイドフリー対オピオイド併用全静脈麻酔の比較:ランダム化比較試験

75.5Level Iランダム化比較試験
Annals of medicine · 2026PMID: 41656873

短時間手術を受ける高齢者400例の単施設RCTで、OFAは主要術後有害事象の複合転帰をOBAより低減した(25.0%対43.5%、調整OR 0.40、95%CI 0.25–0.62)。低酸素血症と術後悪心嘔吐の減少が効果に寄与した一方、OFA特有の副作用への注意が必要である。

重要性: 本実用的RCTは、オピオイド関連有害事象に脆弱な高齢者の短時間手術で、OFAが低酸素血症とPONVを減らし得る高水準のエビデンスを提供する。

臨床的意義: 短時間手術を受ける高齢患者では、低酸素血症やPONVの低減目的でOFA導入を検討し、徐脈・低血圧などレジメン関連事象を予防的に監視する。

主要な発見

  • 主要有害事象の複合転帰はOFAで低かった(25.0%対43.5%、調整OR 0.40、95%CI 0.25–0.62)。
  • 効果は主に低酸素血症と術後悪心嘔吐の減少によるものであった。
  • 高齢者の短時間手術において単施設でOFAは実施可能であり、レジメン関連副作用の管理に留意が必要である。

方法論的強み

  • ランダム化比較試験デザインで主要複合転帰を事前規定
  • 高リスクの高齢者集団を対象とした十分なサンプルサイズ(n=400)

限界

  • 単施設研究であり外的妥当性に限界がある
  • 盲検化やOFAレジメンの詳細構成が抄録内では十分に示されていない

今後の研究への示唆: 多施設実臨床RCTにより、さまざまな手術種別とリスク層でのOFAプロトコルと標準オピオイド併用レジメンの比較、費用対効果や長期転帰の評価が求められる。

序論:短時間手術の高齢者はオピオイド関連合併症のリスクが高い。本研究は、オピオイドフリー全静脈麻酔(OFA)が標準のオピオイド併用全静脈麻酔(OBA)と比べ主要術後有害事象を減らすかを検討した。方法:単施設ランダム化試験で、60歳以上の選択的短時間手術患者400例をOFA群とOBA群に1:1で割付。結果:主要複合転帰はOFA群25.0%、OBA群43.5%で、調整オッズ比0.40(95%CI 0.25–0.62)。結論:OFAは低酸素血症と術後悪心嘔吐の減少を通じて転帰を改善しうるが、副作用の管理が必要である。

2. 成人における周術期絶飲食:国際的・学際的コンセンサスステートメント

70.5Level IIIシステマティックレビュー
Anaesthesia · 2026PMID: 41657234

国際・学際的パネルはシステマティックレビューと3ラウンドのデルファイ法により8つの推奨を策定した。固形物の術前絶食は現行継続、透明液は麻酔2時間前まで奨励し、施設プロトコルでさらなる緩和も可。唾液分泌促進薬は搬入まで許容、術後は可能な限り早期に経口再開し、必要時には術前胃超音波の活用を推奨する。

重要性: 本コンセンサスは、絶飲食時間の安全な短縮に資する実装可能な指針を示し、患者体験と回復の改善、ならびに近代的なプロトコル化の推進に寄与する。

臨床的意義: 透明液の麻酔2時間前までの摂取(施設によりさらなる緩和)を認めるプロトコルを整備し、ガム咀嚼・唾液分泌促進薬は搬入まで許容、術後は早期に経口再開し、必要時に選択的に胃超音波を用いる。

主要な発見

  • 成人は固形物・乳製品を麻酔6時間前(高脂肪食後は8時間前)までに中止し、透明液は通常2時間前まで摂取可能。
  • 安全性と運用を踏まえ、2時間未満でも透明液摂取を許容する施設プロトコルの導入が推奨される。
  • 術後は可能な限り早期に経口再開し、唾液分泌促進薬は搬入まで可。個別判断には胃超音波の活用も提案される。

方法論的強み

  • システマティックレビューに基づく系統的デルファイ法の実施
  • 患者と多職種臨床家を含む国際的ステークホルダー参加により8項目の合意形成

限界

  • コンセンサスは介入試験ではなく、間接的エビデンスの統合に依拠する
  • 緩和プロトコルの実装と安全性は施設・患者集団により異なる可能性がある

今後の研究への示唆: 透明液緩和プロトコルの前向き実装研究や無作為化試験により、誤嚥リスク指標、患者中心アウトカム、費用対効果を多様な環境で検証する必要がある。

序論:既存の術前絶飲食指針は過度の絶飲食につながりうる。長時間の絶飲食は代謝・炎症・腸機能回復・筋力低下などの有害性がある。方法:システマティックレビューを経て13の草案を作成し、国際・学際的パネルによるデルファイ法3ラウンドで8推奨に合意。結果:固形物は現行通り、透明液は麻酔2時間前まで奨励し、施設プロトコルによりさらなる緩和も可。唾液分泌促進薬の使用は手術室搬入まで可。術後は可能な限り早期に経口再開。必要時は訓練者による胃超音波で判断補助。

3. 胸腔鏡手術後の術後鎮痛に対するリポソーマルブピバカイン:システマティックレビューとメタアナリシス

69.5Level Iメタアナリシス
Journal of thoracic disease · 2026PMID: 41660478

9件のRCT(915例)の統合で、リポソーマルブピバカインは胸腔鏡手術後の24・48・72時間のオピオイド使用量を減少させ、24・48時間の疼痛スコアを低下させた。一方、総入院中オピオイド使用量、在院日数、初回離床、入院全体の疼痛負担には差がなかった。短期鎮痛は改善するが、機能的回復指標は不変であった。

重要性: 本RCTベースのメタ解析は、胸腔鏡手術におけるリポソーマルブピバカインの位置付け(短期鎮痛の有効性と機能回復の非改善)を明確化し、ERAS戦略や費用対効果の議論に資する。

臨床的意義: 胸腔鏡手術後の早期疼痛とオピオイド使用量低減の目的でLBを選択肢とし得るが、在院日数短縮や早期離床は期待しにくい。費用や施設パスに応じて適応を検討する。

主要な発見

  • LBは24時間(MD −1.83 MME)、48時間(MD −2.22)、72時間(MD −1.73)のオピオイド使用量を低減。
  • 疼痛スコアは24時間(MD −0.99)と48時間(MD −0.42)で低下したが、72時間では差がなかった。
  • 在院日数、初回離床時間、入院全体のオピオイド使用量および疼痛スコアには有意差がなかった。

方法論的強み

  • RCTのみを対象とし、Cochrane RoB1でバイアス評価を実施
  • エビデンス確実性の評価にGRADEを適用

限界

  • LB投与量や浸潤部位、対照レジメンの不均一性がある
  • 鎮痛効果にもかかわらず機能的転帰の改善は示されなかった

今後の研究への示唆: 標準化ERASパス内でのLB戦略の直接比較RCTを実施し、費用対効果、患者報告アウトカム、オピオイド削減などを多様な胸部手術で検証する必要がある。

背景:胸腔鏡手術は標準的手技となったが、術後疼痛は依然として合併症の原因である。徐放性局所鎮痛薬であるリポソーマルブピバカイン(LB)の有効性をRCTのメタ解析で検討した。方法:主要データベースを系統的検索し、Cochrane RoB1とGRADEで評価。主要評価項目は24時間のオピオイド使用量(モルヒネ換算量)。結果:9RCT、915例。LBは24・48・72時間でオピオイド使用量を有意に減少し、24・48時間のVAS痛みも低下。ただし72時間の痛み、総オピオイド、在院日数、初回離床には差がなかった。結論:LBは短期鎮痛に優れるが、機能回復は改善しない。