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麻酔科学研究週次分析

3件の論文

今週は、化学療法性ニューロパチーの末梢バリア生物学に結びつく基礎臨床研究、麻酔導入期の実践的循環管理、そして小児処置鎮静の用量最適化を中心に注目されました。netrin‑1/cortactinによる周膜封鎖がボルテゾミブ神経障害の回復と相関することが示されました。臨床試験では高リスク患者の導入でノルエピネフリン持続投与がMAP安定化を改善し、適応型無作為化試験で経鼻ミダゾラムの至適用量が確立されました。

概要

今週は、化学療法性ニューロパチーの末梢バリア生物学に結びつく基礎臨床研究、麻酔導入期の実践的循環管理、そして小児処置鎮静の用量最適化を中心に注目されました。netrin‑1/cortactinによる周膜封鎖がボルテゾミブ神経障害の回復と相関することが示されました。臨床試験では高リスク患者の導入でノルエピネフリン持続投与がMAP安定化を改善し、適応型無作為化試験で経鼻ミダゾラムの至適用量が確立されました。

選定論文

1. ボルテゾミブ早期誘発性ニューロパチーの神経毒性と回復:後根神経節障害を伴わない血液‐神経関門機能不全

84British journal of anaesthesia · 2025PMID: 40753003

ラットと患者のトランスレーショナルデータで、早期のボルテゾミブ神経障害は主に周膜/血液‑神経関門の漏出を伴い、DRG変化は軽微であった。回復は周膜バリアの再封鎖、軸索形態と皮膚神経支配の正常化、cortactinとnetrin‑1の上昇と相関し、バリア封鎖生物学が治療標的となり得ることを示唆する。

重要性: 早期ボルテゾミブ神経障害の機序としてDRG細胞死ではなくバリア機能不全を位置づけ、回復に伴うnetrin‑1/cortactinによる周膜封鎖を同定したことで、標的治療の道が開かれる点で重要である。

臨床的意義: ボルテゾミブ治療患者では小線維障害のモニタリングを検討し、バリア修復戦略(netrin‑1アゴニストやECM修飾)を前臨床および初期臨床試験で探索する。疼痛管理はバリア生物学を考慮すべきである。

主要な発見

  • BTZ早期投与はラットで触覚・冷覚過敏と周膜の小分子漏出を引き起こし、回復期に再封鎖した。
  • 神経トランスクリプトームは概日・ECM・免疫遺伝子の変動を示し、DRG変化は軽微であった。
  • 回復に伴い周膜のcortactinとnetrin‑1が上昇。持続痛患者では皮膚神経支配が減少しnetrin‑1は上昇しなかった。

2. 高リスク非心臓手術患者の全身麻酔導入期におけるノルエピネフリン持続投与とボーラス投与の比較:動脈血圧安定性に関する無作為化試験

81British journal of anaesthesia · 2025PMID: 40744797

単施設無作為化試験(n=72)で、導入期におけるノルエピネフリン持続注入は反復ボーラスに比べて導入後15分の平均動脈圧変動(gARV)を低下させ、高リスク非心臓手術患者の循環動態安定化を示した。

重要性: 導入期に関連するMAP変動を低減する単純で実行可能な戦略を示し、臓器傷害と関連する可変因子を修正し得る点で臨床的意義が高い。

臨床的意義: 高リスク患者の導入期に、動脈モニターと注入ポンプを用いたノルエピネフリン持続投与をプロトコル化することを検討すべきである。前負荷最適化や麻酔薬用量と併せた導入バンドルへの統合を評価するべきである。

主要な発見

  • 持続注入は導入後15分のMAP一般化平均実変動(gARV)を反復ボーラスより低下させた。
  • 動脈ラインによる連続モニタリングが主要評価項目の精密評価を可能にした。
  • 無作為化割付により高リスク群での実現可能性と安全性が示されたが、臓器アウトカムは報告されていない。

3. 小児手技鎮静における経鼻ミダゾラムの至適用量:ランダム化臨床試験

81JAMA pediatrics · 2025PMID: 40720114

裂創修復を受ける6か月〜7歳の小児101例を対象とした二重盲検適応型無作為化試験で、経鼻ミダゾラム0.4および0.5 mg/kgが事前規定の適切な鎮静基準を満たし、0.2および0.3 mg/kgは除外された。重篤な有害事象はなかった。

重要性: 頻用される小児鎮静薬の用量を標準化するための高品質な適応型無作為化エビデンスを提供し、実務のばらつきを減らし救急・処置現場での安全性と作業効率を改善する点で重要である。

臨床的意義: 幼児の処置鎮静では経鼻ミダゾラム0.4–0.5 mg/kgを採用し、適切な監視下で実施すること。投与から効果発現・回復までのタイミングと人員配置を標準化することが推奨される。

主要な発見

  • 適応型選択により0.2および0.3 mg/kgは除外され、0.4および0.5 mg/kgが事前規定の適切な鎮静複合エンドポイントを満たした。
  • 用量間で重篤な有害事象はなく、0.4と0.5 mg/kgの二次評価項目に差はなかった。
  • デザイン:第三次小児救急での二重盲検適応型(Levin‑Robbins‑Leu)試験。